まろにしも の好奇心メモ

私にとって知的好奇心はエネルギーの源です。読書や考えたことなどでこれは面白い!と思ったことを備忘的に書いていこうと思います!

計量経済学って面白い!因果関係を検証するツール

40歳を超えてから、経済学を学ぶために某国立大学の大学院に入学
しました。

そして、計量経済学と出会いました。

計量経済学とは、データとデータとの間にある因果関係を読み解くための
学問であり、実証分析系の論文を書くためには、これを用いることが必須
となります。

ま、平たく言うと、計量経済学とは統計学です。

ただし、統計学の方がもっと広い概念で、計量経済学では、特に以下の
2点を重要視します。

 

1.「因果関係」を分析するということ。

これまた統計学の一種である「機会学習」の世界では、「因果関係」
よりも「予測」を重要視することが多いです。「予測」するために、
膨大な数の変数を用いて、因果関係とか相関関係とか、あまり区別せずに、
とにかく「予測」します。予測精度は重要視しますが、そのメカニズム
(因果関係)を解明することには、あまりこだわりません。

因果関係と相関関係の相違については、(これまた面白いので)別の記事
で取り上げたいと思います。

 

2.データの対象が人間であり、「人間の行動」についての因果関係を
分析

ココが、計量経済学の魅力であり目的でもあります。

 例えば、喫煙者と非喫煙者とでは、前者の方が肺がんになる割合が高い
ですね。だけど、これをもって喫煙は肺がんの要因になる
(因果関係がある)とするのは、早計です。

何故なら、喫煙者はお酒を飲む人が多いので、もしかすると、喫煙では
なくて、飲酒が肺がんを引き起こしている可能性も考えられるからです。
もっと言うと、喫煙者は非喫煙者と較べて、健康に対する意識が低く、
生活習慣が不健全である可能性が高いと考えられます。したがって、
喫煙ではなく、「不摂生な生活習慣」が肺がんを引き起こしている可能性
も考えられます。

じゃ、どうすれば、喫煙と肺がんとの間に「因果関係がある」と言える
のでしょうか?

その方法と言うのは、

人間(サンプル)を無作為に抽出し、ランダムに2グループに振り分け、
一方のグループには煙草を吸ってもらい(介入群)、もう一方のグループ
には喫煙を禁じます(対照群)。そして、両グループの肺がんになる比率
を経年で観察し、前者の方が肺がんの罹患率が高いかどうかを確認する、
ということをしなければなりません。

これを、『ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial)』と
言います。

だけど、こんな実験は人道的に許されませんよね。

そこで、出番となるのが計量経済学なのです。

つまり、喫煙などの「人間の行動」は人道上、実験出来ない場合が多い
ので(「非実験データ」といいます)、計量経済学でのテクニックを
用いて、因果関係分析に持ち込むのです。

「第3の変数」で制御したり、パネルデータを用いて個体差の影響を
取り除いたり、「逆の因果」の影響を除去したり・・・

私は大学院で、長時間労働や睡眠時間がメンタルヘルスに与える影響を
定量的・統計的に分析するために、計量経済学を学びました。

結論は、長時間労働⇒短時間睡眠⇒メンタルヘルス悪化
という因果関係が「統計的に有意にある」ことが確認できたのですが、
これはまたの機会に!

先ほどの『ランダム化比較対照試験』も、これまたスゴイんです。

エビデンスとしては最強。

人道的に問題にならない場合は、政策効果を定量的に評価・検証する手段
として米国では良く活用されています(統計後進国の日本と大きな違い)。
⇒EBPM:Evidence-based Policy Making エビデンスに基づく政策立案

高い税金を投入して政策を実行するのだら、少しでも効果の高い政策を
実行するのが筋ですよね。
(政治家の票集めのためのバラマキに使われたらたまらん)

2020年に夫婦でノーベル経済学賞を受賞した、エステル・デュフロ氏
とアビジット・V・バナジー氏は、『ランダム化比較対照試験』を
バンバン活用し、発展途上国の貧困対策について有効な政策を立案
しています。

これについても、またの機会に記事にしたいと思います!

 いずれにせよ、「人間の行動」の因果関係を定量的に分析する、
ってワクワクしませんか?

GAFA+Mは、計量経済学を専門とする経済学者を数百人規模で採用して、
「人間の行動」の因果関係を分析したうえで、マーケティング戦略
立てているのだから、そりゃ日本企業など立ち打ち出来ないですね。
(上場企業が束になっても、GAFA+Mに時価総額で負ける)。